高校生のころ、しきりに星野道夫の本を読んでいた。
そのころ、ひとりきりでアラスカやカナダを旅することを夢みていた。だれもいない荒野でひとりたたずみ、風や雨や光を感じる。そんな時間をすごしたくてたまらなかった。
けっきょく、死んだり何かに襲われたりするのが怖くてそれは実行に移さずじまいだった。
ただ、最近、やけくそになったわけではなく、もう十分に生きたかなという感じがしている。
政治家が言う、安全・安心な生活を生きるのは、もうこれくらいでいいかなと思っているのだ。
それよりも、じぶんの見知らぬ土地を旅し、世界中のさまざまなひとと言葉を交わしてみたい。たとえ、それが自分の命を危険にさらすというリスクをおかすものであったとしても。
著者の石川直樹の本は、別のものを読んだことがあった。
じぶんとそれほど違わない年齢の人間が、じぶんが思い描いていたような生活をしている、そのことを嬉しく思ったし、また焦りを感じたのを覚えている。
就職してから数年が経ったころ、本屋でこの本をみつけた。
タイトルにひかれたのは、じぶんも同じようなことを理想としているからだろうと思う。ただ、行動に移しているかどうかという点において、著者とわたしは格段の違いがあるけれども。
素晴らしいのは、一番最初の文章だ。著者の考えのすべてがこの一節におさめられているような気がする。
本の最後に著者は言う。旅とは、歩き続けることだと。
いままでボクは、何かかしら目的をもったり、特別なことをしなければ旅とは言えないのではないかと考えていたが、この言葉はボクのそんな思い込みを吹き飛ばしてくれた。
高い山に登るのでも、特別な場所にいくのでもない。
ただ、歩き続ける。
それなら、ボクにもできそうだ。
リュックひとつかついで、そろそろ旅にでもでようかと考えている。